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■神様の歌■

■予告■
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 一人の少女と少年が 支える世界がありました

 一つの大陸二つの小島 七つの国がありました

 ひとつの国がありました 古き 歴史ある王国が

 女王の愛す とても綺麗な国でした

 女王が名前と受け継ぐ草色は 王家の女児の 色でした


 一人の少女と少年が 嘆く世界がありました

 大きな運命 ひとつの死 顧みられない 生でした

 少女は一言 言いました 大切です。とただ一言

 世界を愛す とても綺麗な生でした

 少年が嘆いたその果ては

 悲しい世界の果てでした。



「凄いよな、『セイカ様』の生まれた日。
ただそれだけで、これだけの人間が祈りを捧げに教会へ行くんだ」

「随分、セイカ様の御名を、皮肉気に口にするのね」

「戦争に負けた神が、どうしてここまで崇められる」


 遠い昔、三つの国が戦った。二つは滅び、一つが残る。

「情けをかけられるようなつもりは無い!!」
「違うわよ。あなたには資格があるだけ。そして、あたくしには無い。それだけのことよ?」
「お前は何者だ。一国を作り、何をするつもりだ!」
「別に? ―――長い寿命の暇つぶしだわ。世界を一緒に作りましょうよ」


 純粋すぎた『彼女』の想いは やがて狂気を孕んでいく。


 そして悲劇を生み出した。





「ボクは好きだよ。世界が」

「俺は大嫌いだ」


 何も知らずに生きてきた守護神の愛娘は、身を引き裂かれるような思いをして真実を手にする。
 全てをなくした少年は、綺麗な心のままに進み、やがては悲鳴を飲み込んだ。
 金の髪の少年は、大切な人の運命を呪い、神に反旗を翻す。

 歌の主は ただひたすらに明るく笑った。



 自分自身から逃げ出して、世界の淵へときた一人の娘。いるはずの無い『三人目』
 遠い地で受けた称号は、少女自身を縛るもの。


 自ら全てを捨てたため 彼女は二度と戻れない。





 多くの人が、何も知らされないままに、世界はひたすら回り続ける。
 気づいた時にはもう間に合わない。彼らになす術は無いから。

 だから異邦の娘が立ち上がる。


『そんなこと、あたしには関係ない』



 高らかに言い放って。



「コールドジーン。僕がいなくなった後を、頼んでもいいかい?」
「血が・・・・・・血が止まらない!!」
「意味わかんねぇ、ふざけるなよ、なんだよそれ、それじゃ、一体何のために……」



「見届けてくれるの?」


「もちろん」


 これは我侭な人たちの物語。

 『大切』を貫き通した、愛の話。


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