吸い込まれる。
視界一杯に広がる星空を、まるで焦がれるかのように見つめ続ける。
惹かれたのがいつからだったかなんて覚えてない。いつの間にか魅せられて、それ以外がどうでもよくなった。
瞬きと、季節ごとの移り変わり、スケールの大きさに、漠然とした恐怖を抱いて。
それでも、目をそらすこともできない。
わずかな変化でさえも、逃してなるものかと。
それだけでよかった。頭上を見上げて、その世界に思いを馳せているだけでよかった。幸福かどうかは知らない。けれど確かに、満ち足りた時間だった。
それ以外の何かに興味が持てないわけではなく。好きなものにただひたすら手を伸ばしているだけで。
それに夢中になっている間に、もっと大切なものを取りこぼしていることに、気づかなかっただけ。
君みたいな誰かを、ただ、知らなかっただけ。
真夜中、十一月も始まったばかりの、秋が引き止める間も与えてくれず去ってしまった、冬と呼んでも差し支えないであろう、日。
流河は河原で寝転がっていた。あまりにも頓着していないその転がり方に、ため息をつく者がいることも構わず。
静寂の中に、雑音が混じる。
足音。
それは、近づいてくる足音だ。
ふとポケットから時計を取り出し、現在の時刻を確認する。午前二時半。
(誰だ、こんな時間に)
ぼんやりとそう疑問を抱き、同時に、人のことは言えないかとひとつ納得する。流河は、大体の物事に関心を向けないが、自分自身が校内でどう噂されていることくらいは知っている。おせっかいな学級委員が気にかけてくれなければ、学校生活などとてもやっていけないだろう。
とにかく、自分が噂されているような存在と同じ類のものであれば、間違いなく危険だろう。何者か把握する前に、困ったことになるに違いない。
(まぁ、いいか)
どうでも。
しばらく続けていた思考を打ち切り、流河は目を閉じた。
足音は、流河の頭のすぐ脇で、止まる。
「ねえ」
軽やかな声がした。
「なにしてんの?」
どう聞いても、無害そうな、女の子の、声が。
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