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■天体観測■流河 はじまり■

■1■
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 吸い込まれる。
 視界一杯に広がる星空を、まるで焦がれるかのように見つめ続ける。
 惹かれたのがいつからだったかなんて覚えてない。いつの間にか魅せられて、それ以外がどうでもよくなった。
 瞬きと、季節ごとの移り変わり、スケールの大きさに、漠然とした恐怖を抱いて。
 それでも、目をそらすこともできない。
 わずかな変化でさえも、逃してなるものかと。
 それだけでよかった。頭上を見上げて、その世界に思いを馳せているだけでよかった。幸福かどうかは知らない。けれど確かに、満ち足りた時間だった。
 それ以外の何かに興味が持てないわけではなく。好きなものにただひたすら手を伸ばしているだけで。
 それに夢中になっている間に、もっと大切なものを取りこぼしていることに、気づかなかっただけ。

 君みたいな誰かを、ただ、知らなかっただけ。



 真夜中、十一月も始まったばかりの、秋が引き止める間も与えてくれず去ってしまった、冬と呼んでも差し支えないであろう、日。
 流河は河原で寝転がっていた。あまりにも頓着していないその転がり方に、ため息をつく者がいることも構わず。
 静寂の中に、雑音が混じる。
 足音。
 それは、近づいてくる足音だ。
 ふとポケットから時計を取り出し、現在の時刻を確認する。午前二時半。
(誰だ、こんな時間に)
 ぼんやりとそう疑問を抱き、同時に、人のことは言えないかとひとつ納得する。流河は、大体の物事に関心を向けないが、自分自身が校内でどう噂されていることくらいは知っている。おせっかいな学級委員が気にかけてくれなければ、学校生活などとてもやっていけないだろう。
 とにかく、自分が噂されているような存在と同じ類のものであれば、間違いなく危険だろう。何者か把握する前に、困ったことになるに違いない。
(まぁ、いいか)
 どうでも。
 しばらく続けていた思考を打ち切り、流河は目を閉じた。

 足音は、流河の頭のすぐ脇で、止まる。

「ねえ」
 軽やかな声がした。
「なにしてんの?」
 どう聞いても、無害そうな、女の子の、声が。

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